入社後研修などで学ぶことも多い「ロジカルシンキング」。
一方で実務では役に立たないと言うエンジニアの人も多くいます。
しかし、実際にはそんなことありません。
機械という自然科学に従う物体を相手にするため、論理的な考えは非常に重要となります。
今回は機械系エンジニアにロジカルシンキングがなぜ必要か、
それらをどのように活かすかを説明します。
- この記事のまとめ
- 事実、個人の解釈、取るべきアクションを明確に区別する
- 取るべきアクションまで自分で考えることが重要
- 報告する際は取るべきアクションを最初に述べる
ロジカルシンキングとは?
MECEやロジックツリーなど、いろいろな要素がありますが、
機械系エンジニアにとって、特に重要な以下に焦点をあてます。
- 事実
- 個人の解釈
- 取るべきアクション
この3つをきちんと区別し、明確にすることが重要です。
事実
事実は客観的な情報で、個人の解釈に左右されないものを指します。
例えば、評価装置が100Nという値を表示している場合、それを200Nと読む人はいません。
したがって、「評価装置が100Nという値を表示している」という点は事実です。
個人の解釈
個人の解釈は、「事実をもとに自分がどのように考えたか」という部分です。
これは人によって異なる意見が出るため、事実とは分けて考える必要があります。
たとえば、「評価結果がXX」という事実において、それに対する解釈は人によって異なります。
「XXという結果が得られたため、△△という傾向がある」と考える人もいれば、
「XXという結果が得られたが、測定ミスの可能性がある」と考える人もいます。
取るべきアクション
取るべきアクションは解釈をもとに、「次に何をするか?」という点に該当します。
これが最も重要な部分であり、次に何をするのか決まらないのであれば、
実施した評価は無駄になってしまいます。
ロジカルシンキングのポイント
上述の内容を実践する際のポイントを以下に示します。
- 取るべきアクションまで自分で決める
わからないなりにも何らかのアクションを決める必要があります。
単に結果だけ報告して終わりの人では、解釈を相手に委ねることになり、担当として不十分です。
また、解釈までで終わる人も若手では非常に多いです。
これも相手に何も示さずに結論を委ねることになります。
特に相手からもアクションが出てこない場合、業務が停滞する可能性があります。 - 報告の際には取るべきアクションを最初に述べる
長々と結果と解釈を説明し、最後に結論を述べる人がいますが、これもよくないです。
読む側は最後まで読まないと結論がわからず、ストレスが溜まります。
また、結論がわからないまま読む/聞くのは理解に時間がかかるため、
相手のためにもアクションを最初に述べることが大切です。
ロジカルシンキングの例
上述のポイントを具体的な例で説明します。
例:400Nの荷重に耐える装置の設計をし、試作品にて400Nの荷重を与えた。
実際に試験したところ、装置が変形してしまった。
事実
まずは自分が実施した測定とそこで得られた客観的な結果を明確にします。
- 試作品を作業台の上に置き、試作品の中央に荷重負荷装置で400Nの荷重を与えた
- この試験の結果、荷重を与えた近辺で最大1mmのたわみが生じた
注)ここでは自身の解釈を入れず、実際に得られたデータのみを記載することが重要です
解釈:なぜ変形してしまったのか?
この結果をどのように判断するか、自分なりの考えを明確にします。
例えば以下のような解釈が考えられます。
- 設計計算が適切でなかったため、意図しない変形をした
- 試験における荷重の与え方が不適切だった
(例:上から落として衝撃荷重になったなど) - 試作品に欠陥があった
この中から自分なりに「どれが一番事実に近いか?」を検討します。
今回は「設計計算が適切でなかった。想定していた拘束条件が適切でなかった」を解釈とします。
(補足)
これを体系的に論理立てて考えることも、ロジカルシンキングです。
このときにMECEやロジックツリーを意識すると、適切な原因を考えることができます。
取るべきアクション
解釈をもとに、次に何をするかを決めます。
- 厚みを増やして強度を増す
- 厚みを1.2倍にして再度解析(計算)する
これらの内容を関係者に報告する
取るべきアクションをまずは報告するため、以下が理想です。
試作品の試験をしたところ400Nで変形が生じました。
対応として、肉厚を1.2倍に増やした構造で再度解析します。
以下詳細を記載します。
このような説明から始めれば、聞いているほうは「なぜ肉厚を増やすのか?」という点に着目して詳細を聞くことができます。
まとめ
ロジカルシンキングは機械系エンジニアにとって不可欠なスキルです。
特に、事実、個人の解釈、取るべきアクションを明確に区別することが重要です。
また、取るべきアクションを最初に説明することで、コミュニケーションを円滑にとることができます。
役に立たないと決めつけず、ぜひ日頃の業務で意識してみてください。